2020年から続くコロナ禍で社会のあり方は大きく変容しました。多くの企業がテレワークを取り入れ、人々は外出を自粛。あらゆる物事がオンラインで完結するようになったことで、今後の働き方を考えるようになった方も多いのではないでしょうか?2022年に入り、コロナ禍での情勢も落ち着いてきた今、転職市場は大きく動き出しています。
この記事では、転職を考えている20代の方に向けて、アフターコロナの社会で活躍できる、未経験でも挑戦できる職種をご紹介します。
コロナ禍3年目、転職市場の状況は?
3年目に突入したコロナ禍。まだ「正常化」とは程遠い日本社会ですが、最近の転職市場はどのような動きをしているのでしょうか。
まずは転職市場の現況と、どんな職種で人材が求められているかについて見ていきましょう。
求人数は多くの業界でコロナ禍前より多い
日本商工会議所と東京商工会議所が行った調査(2022年2月7〜28日)によると、全国の中小企業約3200社のうち、人手が「不足している」と回答した企業は60.7%となり、2021年2月の調査と比べて16.3ポイント増加、新型コロナ感染拡大前をわずかに上回る結果であったと発表しました。
他方で、コロナ禍の影響を強く受けた「宿泊・飲食業」では、人手が「過剰である」と回答した企業が1割近く(9.0%)あったとのことでした。
また、株式会社リクルートは2021年12月、『リクルートエージェント』の求人数が大半の職種でコロナ禍前の水準を超え推移したことを発表。2021年度のデータをもとに2022年の転職市場は過熱、人材争奪戦が激化するとの見方を示しています。
※グラフはコロナ禍前(2020年1〜3月期)の求人数を基点として、求人数の増減を表したものです。
引用:株式会社リクルート「2022年転職市場の展望」
このように『リクルートエージェント』を利用する企業の多くが、コロナ禍で一時は求人募集を控えたものの、2021年の中頃にはほとんどの業界で募集を再開し、業界によってはコロナ禍よりも多くの求人を出していることがわかります。
また、株式会社リクルートは、昨今あらゆる企業がDX推進に取り組んでいることから、今後も特にITスキルを持った人材(IT人材)が求められる世の中になるだろうと予想しています。
DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、新たなデジタル技術を活用することで、製品やサービスをより革新的なものにしたり、業務そのものを刷新したりすることで、これからの社会での競争力を維持・強化することを意味します。
経済産業省は2018年、国内企業の多くがDX化を実現できなければ、2025年以降、年間で最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があることを指摘しました(2025年の崖)。まさに今、各企業は既存システムを革新的なITシステムに置き換えるなどのDX推進に取り組んでおり、ITに精通した人材を求めています。
参考経済産業省|産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進
そう、転職市場はすでにアフターコロナを見据えて動き出しています。
転職を考えているあなたにとって、2022年は絶好のチャンスの年と言えるかもしれません。
どんな職種で人材が求められている?
それでは具体的に、どのような職種で人材が求められているのでしょうか。
以下でハローワークと転職サイトでの求人状況を見てみましょう。
中小企業では特に「建設業界」が人材募集中
まずは2022年3月のハローワークにおける職業別の求人データを見てみましょう。ハローワークは転職サイトなどと比べて、地元中小企業の求人が多く集まっています。その中でも、求人数が多いかつ求人倍率の高かった職種をリストアップしてみました。
ハローワークでの分類 | 新規求人数 | 新規求人倍率 | 職種例 |
---|---|---|---|
建築・土木・測量技術者 | 21,551 | 9.60 | 設計士、施工管理者、測量士など |
社会福祉の専門的職業 | 24,559 | 4.11 | 保育士、ケアマネジャーなど |
介護サービスの職業 | 38,103 | 3.97 | ケアワーカー、ホームヘルパー、入浴介助員など |
保安の職業 | 16,021 | 7.15 | 自衛隊員、交通誘導警備員など |
自動車運転の職業 | 28,309 | 2.81 | タクシー運転手、ハイヤー運転手、トラック運転手など |
建設躯体工事の職業 | 8,574 | 12.55 | とび職、解体工、足場組立工など |
建設の職業 | 11,423 | 6.03 | 大工、屋根ふき工、左官職など |
土木の職業 | 16,487 | 7.61 | 建設作業員、道路工事作業員など |
求人倍率は求職者1人に対して何件の求人があるかを表しています。例えば求人倍率3.0であれば、求職者1人に対して3件の求人が出ていることを示します。
以上のデータから、中小企業では特に建設業界で人手不足が深刻になっていることがわかります。先にご紹介した日本商工会議所の発表でも、人手が「不足している」と回答した企業の割合は「建設業」75.6%、「運輸業」79.4%とのことでした。「運輸業」は上のリストでいうと「自動車運転の職業」にあたります。
転職サイトでは「IT人材」の求人倍率が高い
続けて、大手転職サイト「doda」が2021年8月に発表した職種別の求人倍率を見てみましょう。
グラフを見てもわかるように、大手転職サイトなどでは特にIT・通信の技術職で人手不足が深刻化しています。求人倍率が特に高い職種について、もう少し詳しく見てみましょう。
グラフ上の職種名 | 求人倍率 | 例 |
---|---|---|
技術系(IT・通信) | 9.68 | SE、ITエンジニア、プログラマーなど |
専門職 | 6.12 | ITコンサルタント、会計士、税理士など |
技術系(建築・土木) | 5.65 | 施工管理者、不動産営業、設計士など |
IT・通信の技術職は飛び抜けて求人数が多いですね。doda以外の大手転職サイトや転職エージェントでも、IT人材の求人は軒並み多くなっています。
さらには、他業界の企業もDX推進が急務となっているため、IT人材を確保しようと動いています。IT人材の不足は今後さらに深刻になるでしょう。このことを受け、IT・通信業界では未経験者の採用を強化して人材獲得に力を入れています。
20代・未経験で挑戦できる職種
ここからは、転職を考えている20代の方に向けて、アフターコロナの社会で活躍できる職種をご紹介します。
「20代の転職」というと、みなさん以下のようなことをポイントに職探しをされているようです。
- お給料のいい仕事
- やりがいのある仕事
- スキルが身につく仕事
- 将来性のある業界での仕事
そこで本記事では、今すぐにでも働ける職種から、事前に勉強が必要だけれど未経験からでも挑戦できる、専門性のある職種まで、いくつかピックアップしてみました。ぜひ参考にしてみてくださいね。
施工管理
施工管理とは、建設プロジェクト全体の指揮・管理を行う仕事です。
例えば一つの建物を建設するとして、施工管理職はまず工期に間に合うよう工事スケジュールを立てます。その後人員や資材を手配し、工事が開始されると現場に常駐して工程管理や品質管理、安全管理を行うなど、あらゆる業務をこなします。
未経験者の募集も多くありますが、専門的な知識が必要な仕事なので、最初のうちは研修を受け、その後は先輩についてアシスタントとして働きながら仕事を覚えていきます。
ただ、施工管理職は激務として有名です。建築の専門知識はもちろん管理能力の高さも求められ、現場では職人さんと上手くコミュニケーションを取りながら、工事の進捗状況をチェック。現場での仕事が終わったあとも事務仕事に追われるという過酷さです。
まったくの未経験の場合、まずはマンション改修工事や内装工事などの比較的小規模な工事に関わる施工管理の仕事を探すとよいでしょう。
引用:リクナビNEXT|施工管理・工事監理者【設備・電気・空調】の求人
大変な仕事ではありますが、工事が完了したときの達成感は何物にも代えがたいそう。誇りを持って働ける、やりがいのある仕事です。
施工管理職は力仕事をするわけではないので、近年では女性の活躍も少しずつ見られるようになりました。人手不足が深刻な業界なので、施工管理の知識と経験があれば、小規模な工事を扱う企業から、大規模な工事を扱うゼネコンなどへのキャリアアップも夢ではありません。
女性ならCADオペレーターも
建設系の求人募集では「CADオペレーター」なる仕事も散見されます。CADはコンピューター上で設計図面を作成するためのソフトです。使い方を覚えれば誰でも設計図の清書ができるようになるため、未経験者やアルバイトの募集もあります。建築に興味を持ち、設計や製図について学ぶなど学習意欲があれば、働き口が多くあるでしょう。
経理
経理業務は、日々出たり入ったりする会社のお金の動きを記録・管理する仕事です。
何かしらの事業をする場合、事業規模の大小に関わらず、経理業務は必ず行わなければなりません。社員の給与や取引先への支払い、利益がどれくらい出たかなど、お金の動きは経理担当者がすべて記録しています。
経理担当として働くには簿記の知識と経験が必要ですが、20代での転職なら「日商簿記3級」ほどの資格があれば、未経験者でも募集している場合があります。
まずは簿記の資格を取り、経理アシスタントとして働ける職場を探すとよいでしょう。経理の仕事は経験を積むごとに日次、月次、年次業務と、より複雑な業務を任されるようになるなど、成長を感じられる職種です。
さらには、経理の経験を生かして税理士や会計士、経営コンサルタントなどの道に進む人もいます。事務方の仕事だけれど、会社の本質的な部分を見ることができる経理業務。可能性を感じられますね。
Webマーケター
Webマーケターの仕事は、Webサイトの集客力を高め、サービスや商品の売上に繋げる仕事です。
Webサイトは、Googleなどの検索エンジンで上位表示されるとたくさんの人が見てくれますよね。Webマーケターは、ユーザーがどんな情報を必要としているか、あらゆるデータを分析して考え、サイト内のコンテンツを作成、改良し(SEO対策)、Webサイトの集客力を高めるための工夫をします。
また、Web広告をどこに、どんなふうに出せばターゲットとするユーザーがサイトを訪れてくれるかなどを考え、効果的なWeb広告を打つのもWebマーケターの仕事です。
Webマーケターは、WebデザイナーやWebエンジニアなどとチームを組んで仕事をすることが多いため、プログラミングが専門の職種ではありません。ただ、サイトのコードを少しいじるなど、プログラミング言語とまったく無関係ではないので、知識があればより活躍できるでしょう。Webマーケターは、20代での転職ならポテンシャルがあると見込まれ、未経験でも募集している場合が多いです。
引用:リクナビNEXT|Webプロデューサー、Webディレクター、Webマスター、Web企画、Webプランナーの求人
未経験者でも求められる人材になるために、まずは書籍などでWebマーケティングについて学び、実際に自分のブログやSNSなどを運営し、集客力を高める工夫をしてみるとよいでしょう。大きな成果はなくても、集客のためにどんなコンテンツを作成したかなど、試行錯誤した経験があれば採用担当者から好意的に受け取られます。
Webエンジニア
Webエンジニアの仕事は、WebサイトやWebアプリケーションの開発、設計、構築を行う仕事です。
Webアプリケーションとはスマートフォンのアプリとは違い、インターネット上で利用するアプリのことです。よく知られているものでは「YouTube」や「Amazon」、「Twitter」などがありますね。
Webエンジニア職は「フロントエンドエンジニア」と「バックエンドエンジニア」2種類に分けられます。
エンジニアの種類 | 仕事内容 | 使用するプログラミング言語 |
---|---|---|
フロントエンドエンジニア | ユーザーが実際に目にするWebサイト画面や、アプリケーションの入力画面、閲覧履歴画面などの設計や構築。 | HTML、CSS、JavaScript、PHPなど |
バックエンドエンジニア | Webサイトの見えない部分の動的な処理システムの要件定義、設計・構築、運用保守。 | Java、Ruby、Pythonなど |
バックエンドエンジニアは、例えばECサイトでユーザーが情報を入力してログインボタンを押したとき、正しい情報であればログイン後の画面を、誤った情報であればエラー画面を表示するようにプログラムを書きます。フロントエンドエンジニアは画面表示の内容をデザインし、設計・構築します。
今、Webエンジニアを含むITエンジニアは慢性的な人手不足です。多くの企業が未経験者を育成してでも人材が欲しいと考えているでしょう。
引用:リクナビNEXT|Web・オープン系 プログラマ【PG】の求人
手に職をつけたいと考えているなら、思い切ってプログラミング言語を勉強してみてはいかがでしょうか。以下のサイトではオンライン上でプログラミングを学ぶことができます。
IT業界は常に新しい技術を学び続ける必要があります。プログラミングに興味を持てるかどうか、好きになれるかどうかをまずはProgateで試してみましょう。
ただ、プログラミング学習はほんの些細な躓きで「難しい」と感じて挫折してしまう場合も多いそう。いつでもプロに質問できる環境で学ぶなら、以下のようなプログラミングスクールを検討するのもいいですね。
UI/UXデザイナーを目指すのも魅力的
WebサイトのUI/UXデザインとは、サイトに表示する写真や文字の見やすさ、わかりやすいボタンの配置などを意識して、ユーザーにとって使い心地のよいサイトをデザインすること(UIデザイン)、また、ユーザーが心地よくサイト閲覧・アプリ利用できるように、ユーザー体験のデータをもとにサイトやシステムを設計すること(UXデザイン)を指します。
最近は見やすく使いやすいデザインのWebサイトをよく見かけますね。Webエンジニアとしての経験を積み、UI/UXデザインを手掛ける仕事を目指すのも魅力的です。
参考UI/UXデザイン例を見てみよう→株式会社 THE GUILD
無形商材の法人営業
無形商材とは、ITシステムやWebマーケティングなどの「形のない商材」を指します。法人営業とは、個人ではなく企業に売り込むことです。
近年、多くの企業がDX推進に取り組んでいますが、中小企業だけでなく大手企業でもまだまだ追いついていないのが現状です。また、システムは導入すれば終わりではなく、その後もスムーズに運用できるようにフォローが必要です。そこでIT業界では、エンジニアなどの技術職だけでなく、自社の商材を売り込み、その後のフォローも任せられる営業職の人材も多く募集しています。
引用:リクナビNEXT|企画営業【法人営業・個人営業】の求人
無形商材の営業は未経験者の募集も多くあります。もちろん商材の知識が必要になるため、入社後は研修を受け、はじめのうちは先輩社員について取引先をまわることになるでしょう。
無形商材の営業として働くと、例えば商材がITシステムであれば、システムについて詳しくなるのはもちろん、技術者とのやり取りが日常茶飯になります。クライアントの悩みを聞き、課題解決に導くためにあらゆる知識が身につくでしょう。そのため、無形商材の営業職からITコンサルタントへのキャリアアップを目指す人もいます。
まとめ
アフターコロナの社会で積極的に人材を募集している職種を5つご紹介しました。どの職種も未経験からでも挑戦できるものばかりですが、知識と経験を身につけるまでの期間はしんどい思いをされるかもしれません。でも身につけたスキルはきっと、これから先の社会での活躍を後押ししてくれるものでしょう。
ただ、建設業界など人手不足が深刻な業界では、入社後の研修もそこそこにいきなり現場に立たせるような派遣会社など、グレーな企業があるのも事実です。求人情報はよく読み、不明点があれば面接時にしっかり聞いてみてくださいね。
20代はまだまだ若く、可能性に溢れた年代です。みなさんがご自身の一番いいと思える道に進めますように。